家庭料理を伝える新しい仕組みをつくる!株式会社シェアダイン 共同代表 井出 有希
家庭料理を通じた食のコミュニケーションを残していきたい
このお仕事をされる上での信条を教えてください。
昔は、母親から料理を一品もらうとか、お義母さんから料理を習うのが当たり前の時代でした。しかし、今はそんな経験をしていない家庭が多いのではないでしょうか。実際、私自身も義母から料理を教えてもらったことはなく、自己流で料理をしてきました。
昔に比べて圧倒的に家庭料理を継承する機会が少なくなっている上に、便利な世の中になり、冷凍食品お弁当、スーパーのお惣菜がすぐに手に入るため、料理を作らなくても生活できる世の中になっています。
今後、私たちの子の世代は今よりも料理を作らなくなるだろうし、さらにその下の世代は、もしかしたら家庭料理は作らなくなってくるのではないかとさえ思います。
そんな時代だからこそ、家庭料理を伝える仕組みを作る必要があると強く思います。
家庭料理は、単なる料理ではありません。相手を思って作るというコミュニケーションだと思うのです。
例えば、シェアダイン共同経営者の飯田は、子どもの頃、飯田が落ち込んでいたら母が何も言わずに彼女の好きな料理を作ってくれたことを思い出として今でも鮮明に覚えてると言います。
誰か大切な人を思って作る家庭料理は、あなたのことを思っていますよというメッセージです。それは、お惣菜を買ってくるのとはわけが違います。便利な世の中になり、物に困らない時代になったとしても、ITで何でもできる世の中になったとしても、家庭料理を通じた食のコミュニケーションは残していきたいという思いがあります。
プロに相談できる出張作り置きサービスを展開
その信条のために、具体的にどのようなことをされているのですか?
プロに相談できる出張作り置きサービスを行っています。
食の専門家に悩みを相談でき、その専門家が家庭のニーズや悩みに応じて献立を提案し、約16食分調理してもらえるサービスです。
1回あたり16食分、大体4日分作ります。サービス価格と食材費を合計して16食ぐらいで割ると、1食あたり600円台、700円台で作ってもらえます。
食の専門家(料理家さん)は、保育園の栄養士からフレンチレストランのシェフといった様々な経歴の方が在籍しています。
シェアダインでは、悩みや要望に応じた料理家さんに依頼できるようにしています。今日は、保育園の栄養士に頼んでみよう、来月はフレンチレストランで働いているシェフにちょっと変わった家庭料理を提案してもらおう、パーティー料理を作ってもらおうなどテーマをタグで検索できるようになっています。
1回のサービスで12品ほど作ります。それぐらい品数があると、そのうち2,3品は子どもがすごく喜んだとか、自分がこれ作ってみたいみたいというレパートリーが出てきます。
シェアダインでは、出張作り置きをしてもらった後、チャットで料理家さんが作り方を教えてくれるサービスがあります。レシピを再現できるところまでをサポートするのが特徴ですね。
子どもが偏食だとか、好き嫌いが多い、食が細いと悩みはそれぞれです。偏食だと子どもが絶対に食べてくれるものしか作らなくなってくるので、どんどんレパートリーが減ります。そうすると、そもそもどんな料理があったのかすら忘れがちになります。
シェアダインは、食の専門家が献立の提案からしてくれるので、自分の料理レパートリーが広がるし、台所に新しい風を吹かせてくれるという声をよくいただきます。
家族構成、ご家庭ごとに異なる食のニーズに寄り添い「家庭料理」を提案し、心を込めて丁寧に調理することを心がけています。少しずつ形を変えながら、いつしかそれをご家庭の味にしていただけたらとの願いを込めてサービスを行っています。
復職後、子どものころの家庭の食卓とはほど遠い現実に悩んだこと
このお仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
1人目を出産した後、産休から復職しました。復職後、一番の悩みだったのが家庭の食事です。仕事から帰宅して夕食を用意する。もちろん時間も限られているので、手の込んだ料理はできません。焼き魚と具だくさんのお味噌汁、たった2品の食卓。それが当たり前になっていました。
その上、当時、子どもが緑の野菜を全く食べませんでした。食べてくれないものは作らなくなり、どうしてもメニューに偏りが出てきてしまうのも悩みでした。私のように働くママは夕食はどうしているのだろう?そんな疑問を持ち、話を聞いたりしているうちに、会社のママとランチに行ったりと、自然とママとのコミュニケーションが増えました。
聞いてみると、私以外の働くママもきちんとした夕食は作っていない人が多かったです。頑張って朝早起きをして作っているとか、夜子どもが寝てから作っているとか、やり方はそれぞれですけれども、みんな工夫してやりくりしていました。それでもみんなやっぱり大変だと言っていました。私は、元々料理は得意じゃないし、工夫することも得意じゃないし、子どもは緑の野菜を食べてくれないしとただただ悩んでいました。
そんな時、後に共同経営者となる飯田も出産後、復職して職場に戻ってきて、ママとしてさらに深く話すようになりました。飯田も子どもの食に関する悩みを抱えていました。彼女の場合、子どもがたんぱく質を全然食べなかったようで、常に華奢だと。飯田は自分だけの課題じゃなくて、この悩みはきっと日本全国で今起こっているはずだと。この悩みを解決することをビジネスにしたいという思いを強く持っていました。
私には食卓のあったかい記憶があります。
母は決して料理がとても上手だったわけではありません。しかし、学校から帰ると、今日の晩御飯は何だろうとワクワクしていました。
例えば、母が天ぷらを揚げている横でつまみ食いしたり、枝豆の端をはさみで切っている母に「お手伝いしようか?」と聞いたりとか。そんな何気ない台所の風景というか記憶は鮮明に頭に刻まれています。
そんなあったかい忘れられない記憶に反し、自分は時間的な余裕はもちろんないし、そんな記憶とは程遠い食生活を送っている。この日常が子どもの食卓の記憶にどんどんなっていっていいのかという焦りや悩み。きっとこの悩みは私一人のものではないと考えるようになり、悩みを解決するビジネスをしたいという思いがつながり、飯田と起業することを決心しました。
ママになったらシェアダイン、それが当たり前の世の中に
今後の目標を教えてください。
プロに相談できることが、楽しくてとってもいいことなんだということを広めたいですね。今はまだ東京とその周辺の地域だけなので、日本全国に広めていきたいと思っています。
出産して、ママになった時、スーパーの宅配を頼む家庭が多くなっています。オイシックスにしようか、それとも生協にしようかと悩む方も多いのではないでしょうか。将来的に、その選択肢の一つに「シェアダイン」が入るようにしていきたいのです。先輩ママが、「ママになったらシェアダインを検討したほうがいいよ。」「登録だけでもしておくといいよ。」と新米ママに勧める、ママのインフラの一つになるのが目標です。
最後にこのページをご覧になっている方へのメッセージをお願いします。
ママ、パパ起業家の方は、子どもが生まれると、パパママになったその日からとたんに全部自分でたくさんのことをしなければいけない日々が始まります。
そういう中で、全部一人で抱え込まず、プロの方に頼ってみてほしいのです。ここ数年は、家事代行などプロに頼むのが当たり前の世の中になってきています。料理や栄養に関してもプロの方に頼んでみる、相談してみてください。そうすると、限りある1日の時間を優先的に起業の時間に使えるようになります。そのプロに頼む選択肢の一つにシェアダインを考えてもらえたらなと思います。
起業すると、浮き沈みが何度も発生します。起業初期は特に葛藤の連続だと思います。
シェアダインは、飯田と私が共同経営者です。飯田も私も子どもがいるので、夜の5時~夜の8時ぐらいまでという時間の成約があります。その中で事業を大きくしていくために、チーム体制で仕事を行っています。例えば、飯田が体調を崩しても、私がカバーして代わりにプレゼンに行くとか、もちろん逆のパターンもあります。
また、深刻な問題が起きた時は、一人で悩まず、すぐに相談します。そして一緒に改善策や対策を考えるようにしています。一人でやっていると悶々と悩んでしまうことも、チームだからこそ、落ち込み過ぎずに済んだということが今まで多々ありました。
一人だとなかなか踏み出せないことも、仲間がいれば一緒に挑戦し、落ち込んだ時は落ち込み過ぎず、うれしい時は一緒に喜んで、様々な困難を一緒に乗り切れます。
これからもし起業を考える人がいたら、一人で何でもしないといけないと考えるのではなく、チーム体制という方法もあることを伝えたいですね。
「シェアダイン」(https://sharedine.me)
〜調理師や管理栄養士などの専門家による出張「作り置き」サービス〜
保育園や小学校給食室で働く栄養士、調理師などの専門家が、家族構成・ライフステージ・ライフスタイル、ご家庭ごとに異なる、食のニーズに寄り添い「家庭料理」をご提案、心を込めて、丁寧に調理します。
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