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【確定申告実践編】独立起業するなら知っておこう!落とし穴にはまる前の予備知識<制度編>個人事業主/フリーランス

2023/02/04

Q:独立起業しました。確定申告をしなければいけないのはよくわかりました。でも、まだ難しそうでよくわかりません。何からしたらいいですか?

 

A:確定申告基礎編で、確定申告の基礎知識や役割について概要が把握できたかと思います。

 

 

復習ですが、確定申告とは1年間に得た収入と所得を「申告」して、所得に対してかかる税金(=所得税)を「確定」させるための手続きです。

 

今回は、いよいよ確定申告の書類の作り方や、書類を作るための記帳の仕方について説明していきます。

 

※こちらの記事は、2022年12月時点の情報です。最新情報は国税庁のサイト等で確認されることをおすすめします。

 

 

 

確定申告は「記帳」が8割!記帳のポイントをおさえて確定申告の書類を作成しよう

 

確定申告の役割や準備が理解できたでしょうか?たくさんの専門用語が出てきましたが、確定申告とは自分の行っている事業の収支を報告して、税金を確定させ、過不足を精算するための手続きです。

 

つまり、事業について普段からしっかりと帳簿付けを行っていれば、確定申告はほぼその結果を書き写すだけの作業となります。日々の帳簿付けによって、確定申告の8割が完了していると言っても過言ではありません。

 

記帳方法については、ノートに手書きしたり、表計算ソフトを使ったりといろいろ方法はありますが、個人事業主やフリーランスの多くの方が、エクセルやクラウド型会計ソフトなどを利用しているようです。

 

また、税理士に記帳を代行してもらうこともできます。ただし、会計ソフトを利用するにしても代行を依頼するにしても、最低限の簿記の知識は必須です。受験までする必要はありませんが、簿記3級のテキストなどで勉強しておくことをおすすめします。

 

確定申告そのものは、先ほども紹介した通り、日々の記帳内容を集計し、その結果をほぼ書き写すのみです。あとは、所得税編で説明した各種所得控除のための証明書があれば作成できます。

 

 

確定申告をするためには、主に次の書類を提出します。

 

・青色申告決算書(青色申告のみ)

・収支内訳書(白色申告のみ)

・確定申告書B

・各種控除の証明書

 

 

提出方法は、e-taxでの提出、税務署への持参、郵送の3種類がありますが、最大額の控除を受けられて税金の計算が不要、且つ24時間申請可能なe-taxでの申請が忙しい方にはおすすめです。

 

電子申告は便利ではありますが、提出が不慣れな方やIT端末機材をそろえるのが手間だと思われる方や、出し直しなく確実に済ませたい方は、直接行政の窓口に出向くのがアナログではありますが一番確実であると思います。親切に書き方や修正箇所をマンツーマンで添削してくれたりもします。

 

ただし、電子申告をしない方が青色申告の控除を最大限利用するには、電子帳簿保存を行う必要があります。電子帳簿保存も行わないとなると控除額は55万円となります。

 

実は、青色申告決算書と確定申告書は、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用すれば作成でき、そのまま提出まで可能です。細かいマニュアルもありますので、所得税の基本知識があれば問題なく申告できるはずです。

 

ここでは、記帳の具体的な方法は紹介しませんが、失敗しやすいポイントやそれを回避するための方法をお伝えします。

 

 

◆ 記帳って難しい!確定申告ってめんどくさい!の解決方法

税理士税理士

日々の帳簿付け、経費かどうかの線引き、確定申告の書類の記入…個人事業主・フリーランスとは、主軸の事業のことだけでなく経理もこなさなくてはなりません。そうなると「手間がかかりすぎる…」「難しいから誰かにお願いしたい…」と思うことは多いでしょう。

 

一番良いのは、独立起業を考えはじめたその時点から、プロである税理士のアドバイスをもらいながら、記帳や各種書類の準備を進めていくことです。

 

税理士と顧問契約を結ぶと、会計や記帳業務、確定申告や決算といった実務だけでなく、定期的に面談を行って経営や資金繰りに関する相談ができたり、節税テクニックを教えてくれたりなど、コンサルタントのような役割を果たしてくれます。

 

特に、長く事業に取り組みたい方、法人化することを考えている方などにとっては、さまざまな個人事業主や法人を見てきている税理士はとても頼りになる存在です。記帳指導や確定申告の書類作成のみなど業務の一部を手伝ってもらうこともできます。依頼するかどうかの相談なら無料であることがほとんどなので、一度話を聞いてみてください。

 

ただ、やはり国家資格を持つプロに仕事を頼むとなると、それなりのコストがかかります。顧問契約では月あたり数万〜、確定申告のみだと10万程度が相場です(売上などによって異なります)。

 

独立起業したばかりの方は、そこまでコストがかけられない場合が多いため、お金をかけずに税理士などのプロの手を借りる方法はいくつかありますので、ご紹介をしておきたいと思います。

 

まずは、管轄の税務署で相談してみることです。税務署には「記帳指導担当」という方がいるので、確定申告の時期を避ければ、比較的待ち時間なく教えてもらえます。税務署から申し込むことのできる「記帳指導」という無料の制度もあり、税理士から直接指導(2回)を受けることもできます。確定申告シーズンの2〜3月になると、税務署主導で還付申告・確定申告の相談会が開催されるので、そこで税理士に相談することもできます。

 

また、商工会が記帳に関する講習会や記帳指導を行っている場合もあります。これらへの参加が難しい場合は、国税庁ホームページの相談窓口に問い合わせることでも回答をもらえます。

 

それから、比較的導入コストが安い会計ソフトなどを使いながら、ある程度は自力で管理し、申告の際には、税理士にお手伝いしていただいてる方も多いようです。自力で記帳するのは大変ですが、その分知識がつき、事業について把握できるようになることはメリットといえます。

 

税理士に依頼するにせよ、会計ソフトを導入するにせよ、税金や記帳に関する最低限の知識は、事業を進めていく上で必要不可欠です。独立起業したなら「よくわからないからとりあえず聞いてみよう、お願いしよう」という考え方ではなく「やろうと思えば自分でできるけど、事業のために人に依頼しよう」という意識でいたいものです。

 

 

◆ 何が違うの?簡易簿記と複式簿記

 

確定申告を行うためには、当然ながら自分の行っている事業の収支を正確に把握しておく必要があります。このために行うのが記帳(帳簿付け)です。記帳方法には、大きく分けて簡易簿記と複式簿記の2種類があります。

 

青色申告を行うためには、簡易簿記ではなく複式簿記での記帳が必須とされています。複式簿記をすると事業の収支状況が一目でわかります。

 

例をあげて考えてみましょう。あなたは独立起業したばかりの個人事業主です。机やパソコンなどを揃えるために100万円を銀行から借りました。簡易簿記の場合、次のようになります。

 

※簡易的に表現しているので、実際の記帳とは異なる部分もありますので注意してください。

 

 

日付 摘要 金額 合計
1/1 A銀行から借入 1,000,000 1,000,000
1/2 B店で事務机購入 -150,000 850,000
1/3 C店でパソコン購入 -100,000 750,000

 

記帳はとても簡単ですが、実際は100万円の借金があるのにこれだと一見45万円の黒字のように見えてしまいます。でも、それはここから判断することはできません。ここに報酬の入金が混ざってしまうと…どうでしょうか?事業の収支がわかるでしょうか?

 

同じ内容を複式簿記で記帳します。複式簿記を行う場合、まずは「仕訳帳」に次のように仕訳をします。

 

・仕訳帳

日付 借方 貸方 摘要
1/1 現金 1,000,000 借入金 1,000,000 A銀行から借入
1/2 工具器具備品 150,000 現金 150,000 B店で事務机購入
1/3 工具器具備品 100,000 現金 100,000 C店でパソコン購入

 

 

最初は難しいと思いますが、この仕訳をすることにより、各項目を多面的に捉えることができます。例えば、銀行から借入をすると「借金が増える」ことと「手元の現金が増える」ことが同時に起きますよね。複式簿記をすることでそれを把握できるのです。

 

これをさらに「総勘定元帳」に転記していきます。このとき、項目(=勘定科目)ごとに記帳していくため、ある時点で現金がいくら残っていて、備品にいくらお金をかけていて、借入金の残高がどれだけあるのか、ということが一目でわかります。

 

・現金

日付 借方 貸方 摘要
1/1 借入金 1,000,000 A銀行から借入
1/2 工具器具備品 150,000 B店で事務机購入
1/3 工具器具お備品 100,000 C店でパソコン購入

 

 

・備品

日付 借方 貸方 摘要
1/2 工具器具備品 150,000 B店で事務机購入
1/3 工具器具備品 100,000 C店でパソコン購入

 

 

・借入金

日付 借方 貸方 摘要
1/1 現金 1,000,000 A銀行から借入れ

 

これらの知識は、日商簿記3級の勉強をすると身につけることができますので、余裕がある方は簿記の勉強をするのもおすすめです。

 

 

◆ どこまで経費?と迷ったら

 

ここまで学んできた皆さんはお分かりかと思うのですが、売上から経費と所得控除を差し引いた額である課税所得に対して税金がかかります。

 

所得控除は項目が決められていますから、そうなるとできるだけ経費として計上したくなりますよね。

 

経費の定義は、国税庁によると、

 

1.総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

2.その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

 

とされています。商品の仕入れや打ち合わせの交通費など、事業に直接かかったお金=経費というのはわかりやすいと思います。

 

では、プライベートでも使っているパソコンや、事務所として自宅の一部を使っている場合はどうなるでしょうか?

 

答えは、使用している割合によって“按分”するというものです。例えば、フリーランスのデザイナーが10万円のパソコンを、仕事であるデザイン業とプライベートの動画編集で半分ずつ使っているとすれば、5万円を経費として計上できます。

 

ポイントは、この按分の割合は特に決められておらず、自分で判断しなければならないということです。パソコンであれば使っている時間、自宅を事務所にしているのであれば床面積など、客観的な事実に基づき算出します。その他、プライベートで使っていても、事業に関わるものであれば経費として計上できます。

 

インターネット上には、ここまでは経費、でもこれは経費じゃない、という情報があふれています。しかし、独立起業したからには「誰かが言っていたから」「ネットに書いてあったから」という理由ではなく、そのお金がどのように、どのくらい自分の事業に役立っているのかを明確に説明して「経費だ」と説明が明確にできることを目指しましょう。

 

 

◆ やってませんか?記帳のよくある勘違い

 

① お金が振り込まれた日に売上になる?

 

これは、とてもよくある勘違いです。帳簿は、原則として「発生主義」という考え方に基づき付けられるものとされています。言葉だけだとわかりにくいので、例をあげて考えてみます。

 

フリーランスのイラストレーターの場合で考えてみましょう。ネット上で販売していたイラストが売れました。この場合、売れた日に売上として計上します。これはわかりやすいですね。

 

では、イラストの発注を受け、それを納品した場合はどうなるでしょうか。このような場合、納品後すぐにはお金が支払われず、検収後に請求書を発行して振り込みは翌月末になるのが一般的だと思います。この場合は、いつ売上となるのでしょうか?

 

正解は、納品した日です。お金が増えるのは振り込まれた日なので、振り込まれた日に計上してしまう人がいますが、これは間違いです。売上が“発生”した日に計上するので発生主義なのですね。ちなみにこの場合、納品時点で「ツケ」で売ったものとみなし、売掛金として計上します。

 

では、さらに考えてみましょう。個人事業主の場合、確定申告の関係で決算は12月でしたね。先ほどの場合で、発注されたイラストを納品したのが12月15日だとします。そうするとだいたい12月中に請求書を発行して、翌年1月末に報酬が振り込まれるのが一般的ですが、この場合所得税はどちらの年に課税されるでしょうか?

 

この場合も「発生主義」に基づいて考えます。つまり、売上が発生した時点で所得税がかかるのです。

 

このように年をまたいだ売上や経費がある場合、二重で計上してしまう、またはどちらの年にも計上していないというミスがよく起こります。このような記帳のミスは税金を払い過ぎたり、延滞税を課される原因となりますので注意しましょう。

 

 

② 領収書がもらえなかったら経費にできない?

 

「個人事業主はとにかく領収書が大事」というのはよく聞く言葉ですよね。では、領収書がもらえなかった場合は経費として計上できないかというと、そうではありません。

 

電車やバスなどの乗車賃、仕事関係の方へのご祝儀、自動販売機で買った飲み物代など、領収書がもらえない場合はままあります。その場合は代わりに「出金伝票」というものを使います。用紙は文房具屋さんや100円ショップで購入できます。電車やバスなどの乗車賃であれば、出金伝票に使った日付や乗車区間、行き先、何をしに行ったのか、を記入します。

 

あとは、補足するための証拠があるとよいです。交通費ならSuicaなどの利用履歴、結婚式ならば招待状などです。客観的に事業に関する支出があったと判断できるものを用意しておきましょう。

 

さて、確定申告に関すること(基礎編・実践編)をお伝えしましたが、皆さんの理解が深まりましたでしょうか。自力で解決が難しいと感じ、税金や確定申告に詳しい知人や税理士に直接話を聞きにいく方は多いです。もちろん、ゆめかなうオンライン相談カウンターでも相談は受け付けていますので、ぜひご利用ください。

 

▼参考・出典

・総務省 https://www.soumu.go.jp/

・財務省 https://www.mof.go.jp/index.htm

・国税庁 https://www.nta.go.jp/index.htm

・厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html

 

 

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