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【インボイス・消費税】最新情報あり!起業するなら知っておきたい基礎知識<制度。編>個人事業主/フリーランス

2023/02/04

Q:インボイス制度が2023年10月から始まると聞きました。フリーランスの知人が「たいへんだ!」と言っていましたが、どんな風にたいへんなのでしょうか?

 

A:インボイス制度は、消費税にまつわるフリーランス・個人事業主にとって大きな影響のある制度です。制度開始の賛否はさておき、事業を営むすべての人に関係があり、判断・対応が必要です。

 

制度開始間近ですが、変更や経過措置が発表されるなどめまぐるしく状況が変化しています。そのため、アンテナを張ってしっかりと情報収集を行い、焦らずに判断をしていくことが必要です。

 

今回は「インボイスってなに?」「消費税ってなに?」という方のために、消費税の基本的な知識から解説していきます。

 

※こちらの記事は、2023年1月時点の情報です。最新情報はインボイス制度特設サイト(リンク:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm)や国税庁のサイト等で確認され」」ることをおすすめします。

 

 

1.まずは税金と消費税の仕組みを理解しよう

 

インボイスについて理解するために、まずは消費税をはじめとした税金制度について理解することが必要です。おさらいもかねて一つ一つ理解していきましょう。

 

 

◆ 税金には大きく分けて2種類ある!「直接税」と「間接税」

 

まず、税金には大きく分けて「直接税」と「間接税」があります。

 

「直接税」とは、税金を「納める人」と「負担する人」が同じ税金のことです。所得税、法人税、贈与税、住民税などがこれにあたります。例えば所得税は、税金を負担する人(所得のある人)が、直接国に納めますね。

 

一方で「間接税」とは、税金を納める人と負担する人が異なる税金のことです。消費税をはじめ、酒税、たばこ税などが間接税です。

 

消費税は、サービスや商品の提供に対してかかる税金です。私たち消費者が商品を購入したとき、その消費税は国や自治体ではなく、商品の代金と一緒にお店に支払い、お店が消費者の代わりにその消費税を国に納めます。私たち消費者が税金を負担していますが、納税するのはお店なので“間接”税といいます。

 

2023年1月時点では、消費税の税率は10%(軽減税率は8%)で、そのうち2.2%は地方消費税です。また、現在は一部を除く食料品には軽減税率が適用されているため、消費税率は8%です。

 

 

◆ 消費税を納めるしくみ

 

では、消費税を納税するしくみについて理解していきましょう。

 

消費者が小売店で10,000円の商品を購入する場合を考えてみます。商品代に対して10%の消費税が課されますので、お店に払う金額は10%上乗せされた11,000円ということになります。

 

ここで、お店は消費者から預かった1,000円をそのまま納税するように思えますが、お店側も商品を仕入れる際には仕入れ先へ消費税を支払っていますので、その分を差し引くことができます。例えば、10,000円の商品を税込5,500円(品物代5,000円+消費税500円)で仕入れていたとすれば、お店は1,000円−500円=500円を納税することになります。

 

画像作成中。↑の画像はイメージです

 

このように、消費税には二重三重に課税されることのないよう、税金が累積しない仕組みが採られています。

 

消費税は、ほとんどすべての取引が対象となります。例外となるのは、土地の譲渡・貸付け、利子・保証料・保険料、行政手数料、住宅の貸付けなどのごく一部ですので、どのような事業を営むにしても関係のある税金といえます。

 

 

◆ 免税事業者とは

 

すべての事業者が消費税を納めなければならないかというと、そうではありません。「免税事業者」といって、消費税の納税が免除されている事業者がいます。

 

免税事業者の条件は、前々年度の売上(厳密に言えば課税売上高)が1,000万円以下であることです。よって独立起業したての方の場合、ほとんどの方は免税事業者にあたると考えてよいと思います。

 

免税事業者は消費税の納税義務がありませんので、消費税の申告・納付は必要ないことになります。ただし、大幅な赤字になった場合など、受け取った消費税よりも仕入れ先などに支払った消費税の方が多くなった場合でも、還付が受けられないことになります。

 

免税事業者に対して、売上1,000万円以上で消費税の納税義務がある事業者のことを「課税事業者」といいます。課税事業者になるには、納税地の所轄税務署長に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

 

 

 

2.「インボイス制度」どんな影響があるの?

 

消費税の仕組みを理解できたでしょうか。ここからはいよいよ「インボイス制度」について説明していきます。インボイス制度は2023年の10月から導入されることが決まっています。インボイスは「適格請求書等保存方式」ともいい、インボイス制度は、簡単に言えば「国が定めた項目が明記された書類を作り、消費税額を正確に相手に伝えましょう」という制度です

 

とはいえ項目だけを守れば良いわけではないため、インボイス制度導入により、個人事業主やフリーランスには大きな影響があるといわれています。

 

この記事を読んでいる方のほとんどは、独立起業をしたばかりの方も多いと思いますので、売上1,000万円以下の「免税事業者」にあたると思います。免税事業者は、消費税を納める義務がない事業者です。ところが先に述べておくと、インボイス制度導入に伴い、売上1,000万円以下であっても課税事業者になることを考えなければなりません。では、その理由について説明していきます。

 

 

◆ インボイス制度導入でどうなる?「免税事業者」への影響

 

具体的な例として、免税事業者であるフリーランスのライターAさんに、インボイス制度が与える影響について考えてみます。

 

フリーランスのライターであるAさんは、課税事業者であるWEB制作会社B社と取引をしています。B社はCさんから依頼を受け、WEBサイトを消費税込みで110,000円(制作費100,000円+消費税10,000円)で制作しました。B社はそのWEBサイトのキャッチコピーや記事の制作をAさんに依頼したので、Aさんは報酬として消費税込み33,000円(原稿料30,000円+消費税3,000円)をB社から受け取りました。

 

このとき、誰がいくら消費税を納めるのかを考えてみます。

 

現行のインボイス制度導入前であれば、B社はCさんから受け取った10,000円の消費税のうち、ライターAさんに支払った消費税3,000円(仕入れにかかった消費税)を差し引いた(控除した)7,000円を国に納めることになります。これを「仕入れ税額控除」と呼びます。

 

しかし、インボイス制度が始まると、この仕入れ税額控除をするためには、仕入れ先から「適格請求書」を発行してもらわなければならなくなります。適格請求書以外の請求書によって支払った報酬や代金は、消費税を支払った証拠として認められないのです。

 

そして「適格請求書」には、相手先の名前や消費税率のほか、課税事業者として登録していることの証拠となる「登録番号」の記載が必須となります。したがって「適格請求書」は課税事業者しか発行できないことになります。

 

ここで、免税事業者はそのまま免税事業者として事業を続けるか、課税事業者として登録するのか、どちらかを選ばなければなりません。どちらを選ぶと、取引先や自分が納める消費税額にどのような変化があり、どのような影響を受けるのかを考えてみましょう。

 

 

① 免税事業者を続けた場合

 

インボイス制度導入後も免税事業者であることを選択すると、その事業者は「適格請求書」を発行できません。適格請求書が発行できないと、取引先企業は免税事業者へ報酬として支払った消費税が控除できなくなってしまいます

 

先ほどのライターAさんの場合で考えてみます。

 

インボイス制度導入前は、B社は発注を受けたCさんから支払われた10,000円の消費税のうち、Aさんに支払った3,000円を差し引いた7,000円を消費税として国に納めていました。

 

しかし、インボイス制度が導入されると、免税事業者であるAさんは適格請求書ではない請求書しか発行できないため、控除が認められません。つまり、B社はライターAさんへの報酬の一部として支払った消費税3,000円を、Cさんから受け取った10,000円から差し引くことができなくなり、B社は10,000円を国に納めなければならなくなります。

 

一方で、Aさんは制度導入前と同様に消費税を納める必要はありません。その点では、売上は維持できることになります。課税事業者になると発生する消費税の申告に関わる経理業務もありません。

 

しかし、上で述べた通り取引先のB社の負担は増加します。すると、同じくらいの技術を持っていて、適格請求書を発行できる競合ライターがいた場合、そちらに乗り換えられてしまう可能性があります。また、取引先の負担が増えた分、単価を下げるよう交渉されるかもしれません。そうなると、結果的に売上減につながりかねません。この点が、個人事業主やフリーランスなどの小規模事業者には、大打撃という議論がなされている所以です。

 

 

② 課税事業者になった場合

 

次に、インボイス制度に伴い課税事業者になることを選択した場合について考えます。

 

課税事業者になり「適格請求書発行事業者」に登録すると、「適格請求書」を発行することができるようになります。そうすると、インボイス制度導入前と同じように、取引先企業は仕入れとして払った消費税を控除することができます。ただし、課税事業者となるため消費税の納税義務が発生します。

 

先ほどのライターAさんの場合で考えると、B社はインボイス制度導入前と変わらず7,000円を国に納めます。一方で、Aさんは課税事業者となったため、B社から支払われた報酬の一部として受け取った3,000円を消費税として納税しなければならなくなります。

 

課税事業者として登録することで、インボイス制度導入後も取引先企業であるB社はこれまで通り仕入れ税額控除ができますので、安定的に取引できます。

 

しかし、課税事業者となると消費税を計算し、納税しなければならなくなりますので、最大で10%売上が減ってしまうことになります。さらに、これまで必要ではなかった経理業務の負担が増えます(「簡易課税」という方法で軽減することもできます)。

 

 

◆ インボイスの現状と猶予について

 

インボイス制度とその影響について理解できたでしょうか?

 

2023年の10月に制度が導入されることが決まっているため「急いで課税事業者にならないと!」と思うかもしれません。しかし、上述の通り小規模な事業主に多大な負担があることから、さまざまな業界から反対意見が多数出ているのが現状です。そもそも、消費税は対価の一部であるという判決が過去にされていること(1990年3月26日東京地裁、1990年11月26日大阪地裁)もあり、反対の声は大きいです。

 

そして、同じく反対意見多数であった電子帳簿保存法については、2年間の猶予期間が設けられました。インボイス制度導入についても、今後同じような対応がとられる可能性はあるでしょう。

 

実際に、当初はインボイス制度が導入される2023年10月1日から登録事業者となるためには、2023年3月31日までの申請が必要とされていましたが、2023年9月30日までに申請すれば良いと発表されました(2022年12月23日)。

 

※ただし登録処理までに、e-Tax提出の場合は約3週間、書面提出の場合は約2か月と時間がかかります。

 

課税事業者についても、2023年10月1日からすぐに仕入れ税額控除ができなくなるわけではありません。6年後(2029年の9月30日)までは、適格請求書を発行できない事業者からの仕入れであっても、仕入れ税額の一部を控除できるという経過措置が設けられています。

 

また「課税事業者への登録が進まなければ制度そのものの導入が見送られるのでは?」という見方もあります。

 

したがって、現在免税事業者の方がインボイス制度導入に伴い課税事業者となるかどうかの決断は、導入や経過措置について具体的に決定してからの決断でも遅くはないと思われます。ただ、取引先から登録を促されたり、登録状況を聞かれたりということはすでにあるようです。情報収集しつつ、焦らず判断しましょう。

 

 

◆ 「課税事業者」になるかどうかの判断ポイント

 

免税事業者から課税事業者となるかどうかは、自分の売上や業種、今後の展望などを総合的に鑑みて焦らずに判断しましょう。

 

注意したいのは、インボイス制度導入後も現在と同じように、必ずしも課税事業者になる義務はないということです。課税事業者となるかどうかは、引き続き事業者自身が決められます。そして、一度課税事業者になってしまうと、基本的に2年間は免税事業者に戻ることはできなくなります。

 

課税事業登録者として登録するか悩んだときに考えるポイントや、インボイス制度開始までにできる対策をお伝えします。

 

 

① 取引先が課税事業者かどうか確認してみる

 

今回のインボイス制度導入で大きな影響があるのは、課税事業者との取引が多い場合です。例えば、小売店や飲食店などの一般消費者を相手にしているような事業では、一般消費者は仕入れ税額控除の必要がないので、他の業種よりは影響が少ないと思われます。

 

ただし、一概にそうとは言えない場合もあります。飲食店であれば接待での利用が多い店など、利用者から領収書を求められることが頻繁にある場合には「適格領収書」を発行をできないと、利用者は経費として仕入れ税額控除できません。このように客層などにより異なりますので、よく検討しましょう。

 

 

② 単価・売上アップの努力をしてみる

 

課税事業者となることのデメリットの1つは、消費税を納税する義務が発生することで利益が納税金額分減ってしまうことです。免税を前提に単価を設定している事業者は、利益を維持するためには納税分を考慮し、値上げをしていく必要がありますので、値上げに対して発注先の理解が必要となります。ここで、発注先に「消費税分の値上げをしてほしい」と頼むのもよいですが、この機会に、より一層自分の「強み」や「売り」をいかして売上を上げることについて考えてみましょう。インボイス制度導入によって取引先を失うリスクもありますが、外注先や委託先を見直して新規の取引先を探し始める企業も多いと思われるため、逆に言えば新規の取引先を見つけるチャンスとも捉えられます。

 

 

③ 「簡易課税制度」で経理負担を軽減できるかどうか確認してみる

 

課税事業者となることのデメリットのもう1つは、消費税申告のための経理業務の負担が増えることです。

 

業務負担を減らす手段の1つとして、事前に届け出る必要はありますが「簡易課税制度」があります。この制度を利用した場合、経理業務の負担を軽減し、納税額を減額することができる場合もあります。簡易課税とは、実際に支払った消費税や受け取った消費税を計算するのではなく、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って納税する消費税を算出する方法です。詳細は、簡易課税制度の事業区分/国税庁(リンク:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm)を参照してください。

 

ただし、簡易課税制度を利用することで、厳密に消費税を計算した場合よりも納税額が多くなってしまう場合もあります。業種や経費の割合によって異なるので、自分で試算したり税理士に相談するなどして利用するかどうかを決めましょう。

 

 

④ これを機に法人化を検討してみる

 

すでにある程度事業が軌道に乗っている方は、法人化を検討してみるのも1つの方法です。法人化することで、最長で2年間消費税が免税されます。ただし、法人化には消費税のほかに多数のメリット・デメリットがありますので、消費税免税だけを目的とした法人化はおすすめしません。あくまできっかけとして考えてみてください。

 

インボイスについて知る・理解する必要はありますが、今すぐ判断する必要はありません。しっかり情報収集を行い判断をしましょう。

 

税金に詳しい知人や税理士に直接話を聞きにいくことはもちろん、ゆめかなうオンライン相談カウンターでも税金に関する相談は受け付けていますので、疑問や相談のある方は、ぜひご利用ください。

 

▼参考・出典

・国税庁 https://www.nta.go.jp/index.htm

 

 

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