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【年金・社会保険】独立起業するなら知っておこう!落とし穴にはまる前の予備知識<制度編>個人事業主/フリーランス

2023/02/04

Q:やりたいことが見つかったので、近いうちに独立・起業したいと思っています。年金や健康保険はどうなりますか?

 

A:独立・起業した個人事業主はやフリーランスは、年金や健康保険といった社会保険についても、すべて自分で選択して加入しなければなりません。これまで会社員や会社員の扶養に入っていた人はすべて会社が天引きして支払ってくれていた保険料も、自分で支払います。また、加入できる年金や健康保険の種類も異なります。

 

ここでポイントとなるのは、ただ必要な手続きをするだけでは最低限の保障しか受けられないということです。将来設計や働けなくなってからのことも考えて、自分で選択していかなければなりません。

 

独立・起業するとなると、どうしても「どんな事業をやっていくか?」「いくらくらい利益をあげられるのか?」ということを考えがち。

もちろんそれも大切ですが、事業に集中して滞りなく進めていくためには、将来への備えや節税という観点で社会保険についても知っておくことが必要です。

 

やる気に任せて後悔しないために、後回しにせずひとつひとつこなしていきましょう。

※こちらの記事は、2022年12月時点の情報です。最新情報は国税庁のサイト等で確認されることをおすすめします。

 

 

1.「国民年金」だけでは不十分?年金を支払うと節税になる?知らないと損する、年金の基本と最新情報

 

会社員は給与から天引きされ、会社が納めてくれる年金。退職したり扶養から外れたりすると、自分で納めていかなければなりません。まずは仕組みを理解し、自ら考え選択することが重要です。

 

 

◆ 個人事業主は原則「国民年金」に加入

会社に所属していない個人事業主は、原則として国民年金に加入することになります。会社を退職した場合は、翌日から14日以内に加入手続きを各自治体の窓口で行います。

 

日本は国民皆年金制度のため、加入する義務があります。忘れずに手続きをしてください。配偶者や子どもなど家族がいる場合は、家族の手続きもあわせて行うことが必要です。

 

※法人化したり、個人事業主でも一定数以上の従業員を雇っている場合は厚生年金加入の対象となります。

 

 

 国民年金受給額は「月6.5万円」、平均支出額は「月13.3万円」。

国民年金に関して注意すべきなのは、厚生年金に加入している人よりも保険料が少なくなるため、65歳以降に受け取れる月額が低くなるということです。

 

国民年金の保険料は所得に関わらず一律で、金額は年によって変動します(令和3年度は16,590円)。一方で厚生年金の保険料は、収入によって増減します。よく“2階建て”と称されるように、国民年金(基礎年金)に上乗せした額を支払います。そのうち、半分は所属している会社が負担してくれます。

 

実際にどのくらい受給額が低くなるかを令和4年度の金額で比較すると、厚生年金の場合は夫婦2人(平均的な年収)で月額219,593円であるのに対して、国民年金では1人あたり月額64,826円(日本年金機構ホームページより)です。

 

総務省の調査(家計調査年報(家計収支編)2020年)によると、65歳以上の1月あたりの平均支出額は、単身の無職世帯で133,146円、夫婦のみの無職世帯で224,390円と、一般的には国民年金だけでは心許ないと言えそうです。

 

 

◆ 知ってますか?節税にもなる老後資金対策3つ

65歳以降に受け取れる年金は、厚生年金加入者よりも少なくなることがわかりました。ここでは、その対策について説明していきます。

 

ここでポイントとなるのは、次の①〜③のどの制度を利用した場合も節税になるということです。制度によって掛金の上限はありますが、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税を節税することができます。

 

独立起業を目指す方の中には老後の心配をしていない方もいるかもしれませんが、未来の資産を作ると同時に手元に残せるお金も増やせるとなれば、利用しない手はありません。ただし、加入する年齢や期間によっては元本割れのリスクもあるため、時には専門家に相談しつつ自分に合った制度を選択しましょう。また、今回紹介する制度以外にも税制優遇される私的年金や投資もあるので、自分で調べて利用していきましょう。

 

 

① 国民年金基金

 

国民年金基金は、年金に国民年金に上乗せして年金を納めることで、65歳(プランによっては60歳)から、原則として死ぬまで年金に上乗せして受け取ることができる、公的な年金制度です。

 

自営業、フリーランスなどの国民年金第1号被保険者や、60歳以上65歳未満の人が加入できます。加入時点に設定した掛金は払い込み期間が終わるまで変わらないことや、原則として一生涯受け取れる終身年金であること、加入時点で将来受け取れる年金額が確定していることからライフプランが立てやすいのが特徴です。

 

 

② iDeCo(個人型確定拠出年金)

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)は私的年金制度の1つで、掛金を自分で設定して運用し、運用益を含めた金額を60歳以降に受け取ることができます。掛金額は5,000円以上で1,000円単位で自由に設定でき、原則として20歳以上65歳以上のすべての人が加入できますが、拠出限度額が区分により異なります。

 

月あたりの拠出限度額は、個人事業主であれば68,000円、企業年金に加入していない会社員なら23,000円、公務員なら12,000円です。60歳になるまでは、途中で引き出したり解約したりすることはできません。投資信託の一種であるため、もちろんリスクはありますがリターンも期待できるのが利点でしょう。

 

 

③ 小規模企業共済

 

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員が、廃業した場合や退職した場合の生活資金などを備えるために積み立てることのできる制度です。月々の掛金は1,000円から70,000円までの間で500円単位で自由に設定でき、加入後に増額・減額することも可能です。共済金は、退職・廃業時に受け取り、満期はありません。

 

共済金は一括でも分割でも受け取ることができ、それぞれ退職金、年金として扱われて税制優遇が受けられます。契約すると事業資金の貸付も受けられます。

 

▼主な老後資金対策まとめ

国民年金

iDeCo

(個人型確定拠出年金)

小規模企業共済
加入できる人

20歳以上60歳未満の

国民年金第一号保険者

(自営業・フリーランスなど)

原則として

20歳以上65歳以上のすべての人

個人事業主、

小規模企業の経営者や役員

掛金/月

いくつかのプランから選択する

(5,000円〜)

5,000円以上で1,000円単位で

自由に設定

1,000円から70,000円までの間で

500円単位で自由に設定

拠出限度額 68,000円/月

※国民年金基金とiDeCoには

同時加入できるが限度額は合計68,000円

個人事業主 68,000円/月

会社員 23,000円/月

(企業年金未加入の場合)

公務員 12,000円/月

※区分によって異なる

※国民年金基金とiDeCoには

同時加入できるが限度額は合計68,000円

70,000円/月
所得控除 全額が社会保険料控除 全額が小規模企業共済等掛金控除 全額が小規模企業共済等掛金控除
受け取り 年金に上乗せして受け取り

終身年金

一括または分割

※それぞれ退職金、年金として扱われ

税制優遇

一括または分割

 

※それぞれ退職金、年金として扱われ

税制優遇

ポイント 加入時点に設定した掛金は

払い込み期間が終わるまで変わらず、

加入時点で受け取れる年金額が確定。

ライフプランをしっかり立てたい人に。

60歳になるまで解約不可。

運用益は非課税。

運用方法は自分で選択する必要がある。

投資信託のためリスクがあるので、

投資に興味がある人にはおすすめ。

廃業・退職時には

年齢に関係なく共済金を受け取れる。

また加入にも年齢制限なし。

解約が早すぎると元本割れすることも。

細かい加入条件などは各公式サイトをご確認ください。

 

 

 【2022年最新情報】社会保険制度の変更点

2022年も社会保険制度に関する法律が改正されました。変更点はいくつかありますが、大きいものは社会保険の適用範囲の拡大でしょう。

 

これまで労働時間が週20時間以上の短時間労働者は、勤め先の規模や勤務期間の条件によって社会保険の適用範囲外でした。ところが今回の法改正で、その条件が緩和され、社会保険の適用される範囲が拡大されました。

 

影響がある方の例として、配偶者の扶養に入っている方が挙げられます。今回の適用拡大の対象となっていなければ、いわゆる「130万の壁」=年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、自ら国民年金・国民健康保険に加入して保険料を負担する必要があります。しかし、将来の年金給付などの受取額に違いはありません。

 

一方で、今回の適用拡大の対象となれば、月収8.8万円以上(年収106万円)、つまり年収130万円よりも低い基準で扶養を外れることになります。ただし、この場合、国民年金・国民健康保険ではなく、厚生年金・健康保険に加入します。

 

保険料は会社と半分ずつ負担し、将来の年金給付や健康保険の傷病手当金などの保障がより手厚くなります。この場合、既に扶養を外れているため、年収130万円の基準を超えないようにする必要はなくなります。

 

 

2.「国保」だけじゃない!お得なものを選択すべき

 

 

年金と同じく、健康保険料も会社員では給与から天引きされており、また額は勤め先や居住地によって異なります。こちらも、年金と同じく会社と本人で半分ずつ保険料を納めています。日本は国民皆保険なので、健康保険に未加入でいることはできません。保険料も遡って納付することになりますので、手続きは忘れないようにしましょう。

 

 

◆ 個人事業主は原則「国民健康保険」に加入。ただしそれ以外の選択肢も検討しよう

 

個人事業主は、原則は国民健康保険、いわゆる国保に加入することになります。退職後14日以内に各自治体の窓口にて、退職時に会社からもらった「健康保険資格喪失証明書」を持って行き手続きをしてください。

 

ただし、会社員時代よりも保険料が大幅に高額になることが多いです。そのため、少ないですが国保以外の選択肢も検討しましょう。

 

会社を退職して独立する方であれば、会社員時代に加入していた保険にそのまま加入する(任意継続)ことができます。加入要件や保険料は加入先により異なるので、問い合わせが必要です。

 

また任意継続する場合、退職前は会社が支払ってくれていた半分の保険料も自分で支払うことになるので、退職前よりは多くの場合高額になります。それでも国保よりは安い、という場合も多い上に、在職中と同じように給付金が支払われる場合もあります。

 

ほかに、デザイナーやライターという職種の個人事業主やフリーランスなら文芸美術国民健康保険(文美国保)に加入することもできます。加入するには、文芸美術国民健康保険組合に加盟している団体の会員になる必要があります。加盟団体の一覧は文芸美術国民健康保険組合のホームページに掲載されています。

 

補償される内容はほぼ同じですが、所得額や家族の人数によって保険料は変わりますので、しっかり調べて加入する保険を決めましょう。

 

 

◆ 保険料減免制度を知っておこう

 

国保は、保険料が高額になる場合が多い上に、未加入でいることはできません。では、保険料が支払えないときはどうしたらよいのでしょうか。

 

国保には、さまざまな減免制度があります。実は年金も減免は受けられますが、将来受け取れる金額も減ってしまうので、売上がなく保険料が支払えない場合はまず国保の減免が受けられるかどうかを調べることをおすすめします。

 

例えば、病気や契約解除など非自発的に会社を退職した場合、保険料の減免を受けられます。他に、売上が前年より著しく下がった場合、災害の被害を受けた場合なども減免の対象です。そして今後は、出産前後の4ヶ月間は免除されるよう法整備される予定です。ただし、自治体の窓口で申請が必要な場合が多いので注意してください。

 

 

会社を辞め、独立起業するということは、今まで会社にやってもらっていたたくさんの手続きを自分でしなくてはならなくなるということです。まさに自分の足で歩くことですね。

 

とはいえ税金や保険に関わることは専門知識がないと難しいもの。わからないことをわからないままにせず、税理士などの専門家の力も借りましょう。

 

 

▼参考・出典

・日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/index.html

・総務省 https://www.soumu.go.jp/

・iDeCo公式 https://www.ideco-koushiki.jp/

・国税庁 https://www.nta.go.jp/index.htm

・全国国民年金基金 https://www.npfa.or.jp/

・中小企業基盤整備機構 https://www.smrj.go.jp/index.html

・厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html

・文芸美術国民健康保険組合 http://www.bunbi.com/

・出産前後の4カ月、国民健康保険料免除へ 厚労省方針/朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQCK6GRFQCKUTFL00N.html

 

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