【海外レポ連載】「働き方・生き方・幸せ」を見つける北欧の教育制度 <連載2>
2018/12/23
はじめに
前回の連載では、「自分が幸せである状態」について、お話しました。
「自分が幸せである状態」を見つけることができているのか、見つけたとしても実行に移すことができているのか、そもそも日本はその両方を叶えることができる環境作りをしているのか、とういう点について問題定義しました。
その中でも今回は日本の「教育制度」について北欧諸国との比較と日本の教育のあるべき姿を探っていきたいと思います。
働き方改革のために教育を改革することは、効果がでるまでに長期を要すため、軽視されがちですが、「自分が幸せである状態」を見つけるための大事なステップだと思います。
現在政府が行なっている「働き方改革」は、これから日本が変化していくなかでの最初の一歩となる制度の変革です。「働き方改革」は「一億総活躍社会」の実現に向けたキーとなるでしょう。しかし、教育制度の変革に関しては、未来塾創設と奨学金制度の改善のみになっており、まだまだ変革が必要な部分であると思います。
今回は、教育制度の比較に加え、日本のこれからの変化、次回以降に続く、家庭や仕事に対する考え方の根幹に関わる意識についてお話していこうと思います。
北欧の教育制度
私は、高校2年次にスウェーデンのストックホルム近郊にある現地の高校に一年間留学しました。その高校はいわゆる、「区立」の中高一貫校で、近隣の学生はみんな通っていました。
そもそも、スウェーデンは私立の学校がとても少ないです。ほとんどの学生は自分の地域にある学校に行きます。理由は簡単で、どこにいっても同じレベルの教育を受けることができて、評価も同様にされるからです。
スウェーデンでは、一応センター試験のようなものもありますが、基本的には学校での平常点でいける大学を決めることができます。この平常点の情報はいつまでも保持されます。この制度が教育に対する人々の考えを形成していると言えます。
というのは、この平常点があれば、人生におけるどの段階でも大学に行けることができるからです。
例えば、高校を卒業したのちに3年間働いて、そのあと大学に通う、という選択が可能なわけです。もしくは、大学を2年間休学したのちにまた復帰するといったこともできます。
日本(基本的に世界中どの国でもそうかもしれませんが)は、学歴社会です。大半の人は小学校から就活まで、ノンストップで教育を邁進し、そうしなければならないというような雰囲気があります。
親もそういった人生を進んできたので、子供にも同様の教育を受けさせるための投資をやめません。小学校から塾に行く子もいますし、浪人を田舎から東京にでてきてする人、私立でエスカレーター式に進んでいかせることもあります。
日本の教育の最低ラインは、他のどの国と比べてもかなり高いです。識字率の高さや、高校や大学への進学率もかなり高いです。しかし、得られている教育の質の差は、親の所得などに依存しているのではないでしょうか。また、大学まできても、学部を選んだ理由や自分の勉強したいことがわからずに、ただ4年間を過ごしてしまう学生も多いと思います。
北欧諸国の教育が大事にしているもの
これは、学生自身が「自分が幸せだと思える状態」を見つけないまま、周りのスピード感に合わせてどんどん進学してしまうために起こっている状態です。
これは、大学が「研究機関」というものであることを日本の社会では無視してしまっているために起こる問題です。
大学はなにかを研究したいから行くものだ、という発想でないため、その「研究したいものをみつける時間」を無視してしまうのです。この「研究したいもの」というのは「自分が幸せだと思える状態」の基本の部分になるものだと考えています。大学に行ってそのまま企業に勤める場合にも、自分がしたいことを見失ったまま、大学の学部でやっていることに近い企業に勤めるのではないでしょうか。
北欧諸国で、大学に行く前に1年なり3年なり、人それぞれ進学しないで就職したり旅行にいったりするのは、この「研究対象」を見つける時間を人それぞれ取るためです。北欧諸国も、学歴は重視されますが、「どの大学で」ではなく「何をどのように勉強し、その背景はなんだったのか」という点を重視されます。
日本では、大学の最後に就活をしながら、それを発見しようとし、自己分析で悩む学生が多いのだと思います。
この「研究対象」を、日本人は仕事を始めてから気づき、「自分が幸せだと思える状態」を実現していくのです。だから、大学の4年間が無駄に感じてしまうこともあったり、仕事を始めてもう手遅れになってしまったりするパターンがあると思います。
ただ、仕事を始めてからでも「研究対象」を見つけた人は、いまからでも実行することが肝心だと思います。「自分が幸せだと思える状態」を思い描いてから、「研究対象」を発見し、大学に戻らないでも勉強をしたり、実験的でも実際に行動に移したりすることによってのみ、やりたいことを成し遂げることができるのではないでしょうか。
次回は、実際に「たまたま」スウェーデン留学時の友人が旅行で日本を訪れているので、スウェーデン人の考え方を、生の声としてお届けできればと思います。
次回に続く
著者プロフィール
矢野心平
早稲田大学国際教養学部3年生。中学時代から日本の労働環境について興味を持ち始め、働き方改革や労働問題について学習を始める。高校2年次にスウェーデンに1年間、大学入学後はデンマークのコペンハーゲン大学に1年間留学し、人材資源管理や社会保障制度について学ぶ。帰国後の現在も、大学で北欧政治を学んでいる。